近年、DIYブームの影響で、外壁塗装を自分で行う人も増えています。しかし、外壁塗装は専門的な作業が多く、素人が行うには大変な作業です。
それでも、費用を節約したい、達成感を得たい、DIYの経験を積みたいなどの理由から、自分で塗りたいと考える人が増えています。
この記事では、DIYで外壁塗装を行う際の準備、手順、ポイントについて説明しているので、DIYで外壁塗装を行う際の参考にしてください。
目次
DIYで外壁塗装をするメリットとデメリット
DIYで外壁塗装をするメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット |
・費用をおさえられる ・自分の好きなタイミングで塗装できる ・手続きや打ち合わせをしなくていい ・悪徳業者にあたる心配がない | ・手間と時間がかかる ・ケガをする恐れがある ・下地処理ができない可能性がある ・失敗して費用が余計にかかることもある |
DIYで外壁塗装をする場合の費用
下記の表に、40坪(約132㎡)、50坪(約165㎡)、60坪(約198㎡)、70坪(約231㎡)、80坪(約264㎡)の住宅に対して、アクリル塗料、ウレタン塗料、シリコン塗料、フッ素塗料を使用した場合の塗料にどのくらいの費用がかかるのか計算してみました。
- アクリル塗料: 1㎡あたり1,500円~2,000円
- ウレタン塗料: 1㎡あたり1,800円~2,600円
- シリコン塗料: 1㎡あたり2,300円~3,400円
- フッ素塗料: 1㎡あたり3,800円~5,000円
坪数 | 面積 (㎡) | アクリル塗料 (万円) | ウレタン塗料 (万円) | シリコン塗料 (万円) | フッ素塗料 (万円) |
40 | 160 | 24〜32 | 28.8〜41.6 | 36.8〜54.4 | 60.8〜80 |
50 | 200 | 30〜40 | 36〜52 | 46〜68 | 76〜100 |
60 | 240 | 36〜48 | 43.2〜62.4 | 55.2〜81.6 | 91.2〜120 |
70 | 280 | 42〜56 | 50.4〜72.8 | 64.4〜95.2 | 106.4〜140 |
80 | 320 | 48〜64 | 57.6〜83.2 | 73.6〜108.8 | 121.6〜160 |
※面積 (㎡):各坪数に対する塗装面積の目安です。
※塗料の費用:各塗料の1㎡あたりの費用を掛け合わせた金額です。
※追加費用:上記の費用に加え、高圧洗浄時の水道代やクラック補修のコーキング代がかかります。
正確な費用は、塗装面積や塗料の種類、必要な追加作業などによって変動するため、計画を立てる際には余裕を持った予算を設定することをおすすめします。
DIYで外壁塗装する際の日数
外壁の塗り替えを自分で行うのは、プロに依頼する場合と比較して、作業日数が大きく違います。
塗装業者による外壁塗装は、一般的に約2週間(14日程度)で完了しますが、DIYではその3倍以上、つまり約6週間(42日間)かかると思ってスケジュールを立てる必要があります。
また、外壁塗装は天候に大きく左右されます。雨天や強風の日は塗装作業ができず、計画が遅延することがあります。特にDIYの場合、天候の変動を見越して余裕を持ったスケジュールが必要です。天候に恵まれないときは、作業期間がさらに延びます。
DIYで外壁塗装に必要な道具
自分で外壁を塗る際には、適切な道具を揃えることが大切です。ここでは、必須となる道具とあると便利な道具について、それぞれの用途やおすすめの情報をお伝えします。
必要な道具
道具 | 用途 | 選ぶポイント |
ローラー | 塗料を大きな面積に均一に塗布する | 毛足の長さに注意し、表面に合わせて選ぶ |
刷毛 | 角や細かい部分の塗装 | 毛の質と密度が高いものを選ぶ |
マスキングテープ | 塗装しない部分を保護する | 強力な粘着性を選ぶこと |
養生シート | 大面積を覆い、塗料の飛散を防ぐ | 厚手のもので広範囲をカバーできるタイプを選ぶ |
養生テープ | シートを固定し、塗料の侵入を防ぐ | 撥水性が高いものを選ぶ |
あると便利な道具
道具 | 用途 |
スプレーガン | 塗料の塗布を迅速かつ均一に行え、大きな面積を短時間で仕上げることが可能。 |
高圧洗浄機 | 外壁の清掃を行う際に、汚れや古い塗料を除去するために使う。 |
サンドペーパー | 表面の微細な凹凸を整え、塗料の密着を向上させるために使用。 |
バケツ・ブラシ・洗剤 | 外壁の汚れをしっかりと落とし、塗装の準備を整える。 |
コーキング材 | ひび割れや隙間を埋めるために使用する。 |
ヘルメット・作業着・作業靴 | 安全を確保するための必須アイテム。 |
延長ポール | 高所の塗装作業を地上から行うため、刷毛を高いところまで届くようにする。 |
パテ | 小さな穴やひびを埋め、表面を滑らかにするために使用。 |
塗料ミキサー | 塗料を均一に混ぜ合わせ、最適な塗料状態を保つために使用。 |
DIYで外壁塗装をする際の塗料選び
外壁塗装をDIYで行う際には、適切な塗料を選ぶことが重要です。塗料には油性塗料と水性塗料があり、それぞれの特性を理解した上で選びます。以下で、各塗料の特性とDIYにおすすめの塗料についてお伝えします。
塗料の種類と特性
特性 | 油性塗料 | 水性塗料 |
乾燥時間 | 長い | 短い |
保存性 | 使用後の保存が難しい | 使用後も保存が可能 |
コスト | 比較的高い | 比較的安い |
使用のしやすさ | 撹拌が重要、初心者には扱いが難しい場合がある | 撹拌が容易で色ムラが起きにくい |
耐久性 | 高い | 比較的低い(1液型の場合) |
臭い | 臭いが強い | 臭いが少ない |
油性塗料は耐久性や耐候性に優れていますが、臭いや乾燥時間が長くDIYには不向きな面があり、扱いやすさ、環境への優しさ、経済面からDIYで使用するなら水性塗料がおすすめです。
1液型と2液型の特性
塗料の種類 | 特性 | メリット | デメリット |
1液型塗料 | 主剤塗料に希釈剤を混ぜて使用 | 撹拌不足による色ムラが起きにくい取り扱いが簡単で、費用も安価使い切れなくても保存しやすい初心者でも扱いやすい | 耐久性が2液型に比べて低い |
2液型塗料 | 主剤と硬化剤を混ぜて使用 | 非常に高い耐久性を持つプロ仕様で長期間効果が持続 | 撹拌が必要で、混合比率に注意が必要混合後、使用期限が短い扱いが難しく、DIYには不向き |
DIYで外壁塗装を行う際には、1液型塗料がおすすめです。取り扱いが簡単で費用も安価な1液型塗料は、初心者でも均一な仕上がりが期待でき、保存も簡単です。
2液型塗料は耐久性が高いものの、扱いが難しく、DIYには向いていません。
適切な塗料選び
樹脂の種類 | 耐用年数 | 特性 | デメリット |
アクリル | 約5~7年 | 価格が安い | 耐久性が低い |
ウレタン | 約8~10年 | 耐久性がある | 価格は中程度 |
シリコン | 約10~15年 | 耐久性と価格のバランスが良い | 特にデメリットなし |
フッ素 | 約15~20年 | 非常に耐久性が高い | 価格が高い |
DIYでの外壁塗装で、それなりの耐用年数がある塗料を選びたい場合は、耐用年数が約10年のシリコン塗料がおすすめです。シリコン塗料は、耐久性があり、価格も手頃で、初心者でも扱いやすい塗料です。
DIYで外壁塗装をする際の工程
DIYで外壁塗装を行う際には、塗装業者と同じ工程で作業することが必要です。
正しい工程を省略せずに一つ一つ丁寧に作業することで、塗装の品質を保ち、長期間にわたり外壁を保護する塗膜の層ができます。
下記に、外壁塗装の基本的な工程と内容・必要な道具について紹介します。
必要工程 | 内容 | 必要な道具 |
① 足場の設置 | 高所作業を安全に行うための足場を組み立てます。 | 足場材、足場用クランプ、安全ベルト |
② 外壁の洗浄 | 高圧洗浄機で外壁の汚れやカビを洗い流します。 | 高圧洗浄機、ブラシ、洗剤、水道水 |
③ 外壁の乾燥 | 洗浄後、外壁を完全に乾燥させます。 | 乾燥時間(晴天時で1~2日) |
④ 下地処理 | ひび割れや欠損部分をモルタルやコーキング材で補修し、サンドペーパーで表面を整えます。 | モルタル、コーキング材、ヘラ、サンドペーパー |
⑤ 養生 | 窓やドア、植栽など、塗装しない部分を養生シートとテープで保護します。 | 養生シート、マスキングテープ、養生テープ |
⑥ 下塗り | プライマー(下塗り材)をローラーや刷毛で塗布し、塗料の密着性を高めます。 | プライマー、ローラー、刷毛 |
⑦ 中塗り | 中塗り塗料を均一に塗布し、塗膜の厚みを確保します。 | 中塗り塗料、ローラー、刷毛 |
⑧ 上塗り | 仕上げの塗料を塗布し、美観と保護効果を高めます。 | 上塗り塗料、ローラー、刷毛 |
⑨ 養生取り | 養生シートやマスキングテープを丁寧に取り除きます。 | なし |
⑩ 足場の解体 | 作業が完了したら、足場を解体し片付けます。 | なし |
DIYでの外壁塗装に向かない状況
外壁塗装は、DIYでも行うことができますが、すべての建物におすすめできるわけではありません。
無理をしてDIYで外壁塗装を行うと、仕上がりが悪くなったり、思わぬトラブルが発生したりすることもあります。
高所作業は転落の危険性あり
DIYで外壁塗装をするときは、脚立や簡易的な足場が使用されますが、それでは2階部分以上を塗装するのは危険です。
厚生労働省によると、建設業における事故の中で最も多いのは墜落・転落事故であり、全事故の約47%を占めています。これはDIYでの高所作業がいかに危険であるかを示しています。
劣化が激しい建物を自分で塗装する場合
外壁の劣化が激しい場合、塗装前の下地処理はDIYでの対応が難しく、専門的な知識と技術をもった職人がしたほうがよいケースもあります。
特に、劣化が激しい外壁には、広範囲にわたりクラック、剥離、カビ、苔などが発生していることがあります。
これらの症状には、適切な下処理と補修をしないと、新しい塗料の密着が不十分になり、仕上がりの質が低下し、塗装の耐久性にも影響を及ぼします。そのため、DIYで適切な対応が難しいことがあります。
梅雨や湿気の多い季節に自分で塗装する場合
外壁塗装は基本的に雨天時に施工することができません。雨の日に外壁塗装をしてしまうと、塗膜と外壁の間に水滴が混入してしまい、すぐ剥がれる原因になります。
特に湿気が多い6月、9月の時期にDIYで外壁するのは避けるのが無難です。
また、早朝や夕方は結露も発生します。結露が発生しているが壁に塗装することはできませんので、完全に乾くまで放置する必要があります。
上記様々な要因があるため、外壁塗装をDIYすることは難しいでしょう。仮に塗装したとしても、密着率が悪くなり塗膜が剥がれたり浮いたりしてしまいます。
結果として、再施工が必要になるため、DIYで無理はせず業者に依頼することがおすすめです。