モルタルを使用した建物部分への塗装は可能なのか?
塗装を検討しているが、タイミングや手順、費用について詳しく知りたい方に、モルタルの特徴やデメリット、塗装の手順、防水性について詳しく解説しています。
モルタル塗装のポイントを理解し、最適な塗装を行うための参考にしてください。
目次
モルタルとは
一般的に砂、セメント、水を練り合わせて作られたものです。
セメントが結合材として砂を固めることで強度を持たせます。また、石灰や石膏を使ったモルタルもあります。
モルタルは、壁や床の仕上げ材、ブロックの接合材として幅広く利用されており、丈夫で耐久性がありますが、防水性が低いという特徴があります。
モルタルの塗装をするタイミング
前回のリフォームや新築から約10年が目安とされています。ただし、これはあくまで目安であり、実際のモルタルの劣化状況によって判断することが大切です。
具体的な劣化症状、適切な対応について紹介します。
ヘアークラック
髪の毛のように細いひび割れのことです。
地震や近くを大型車が通った際の振動の積み重ねで発生することがあります。
このひび割れ自体はすぐに雨水が侵入するわけではありませんが、放置しておくと幅が広がり、深刻なダメージにつながることがあります。そのため、早めに補修を行いましょう。
モルタル外壁の表面にあらわれるチョーキング
モルタル外壁の表面にチョーキング現象が見られるとき、塗膜の防水効果が失われているサインです。
チョーキングとは、表面を触ると白い粉がつく状態のことを言います。
これは塗料が劣化して粉状になっているためで、そろそろ塗装をする時期が来たことを示しています。放置すると、モルタル自体が劣化するため、早めの補修が必要です。
モルタル塗装の剥がれ
モルタル塗装が剥がれるのは、塗料の付着力が弱まっているためで、塗装が浮いたり剥がれたりすることがあります。
外壁を保護する機能が失われ、補修が必要な状態なので早めに塗る替える必要があります。
おおきな衝撃にともなう構造クラック
構造クラックとは、幅0.3mm以上、深さ5mm以上の大きなひび割れのことです。
これらは大きな地震や強い衝撃、下地の劣化などが原因で発生します。
構造クラックは雨水の侵入により、鉄筋がサビるなど基礎の強度に影響を与える可能性が高いため、早急な補修が必要です状況です。
モルタル外壁には「弾性塗料」がおすすめ
外壁塗装には様々な塗料が存在しますが、モルタル外壁には弾性塗料がおすすめです。
弾性塗料にもいくつかの種類があり、それぞれ特徴が違いますので紹介します。
弾性塗料の特徴
弾性塗料とは、ゴムのように伸びる塗膜になる塗料で、伸び縮みする性質を持っています。
<メリット>
伸縮性のある塗膜がひび割れしにくく、モルタル外壁の劣化を防ぎます。また、防水性が高いため、外壁の耐久性を向上させることができます。
<デメリット>
施工には高度な技術が必要で、専門知識を持たない人には難しいです。また、塗膜が厚いため膨らみやすく、見た目や機能に影響を与えることがあります。さらに、耐用年数が他の塗料と比較して短い傾向があり、頻繁なメンテナンスが必要です 。
単層弾性塗料の特徴
単層弾性工法は、下塗り(シーラー)1回→高弾性上塗り2回の3工程になります。
工法は外壁に直接高弾性の塗料を塗り重ねるシンプルなもので、施工が比較的容易です。
単層弾性塗料の特徴とデメリットは下記のとおりです。
特徴 | デメリット |
工程が少なく、工期も短い | 耐用年数が短い |
費用が抑えられる | 長期的に見ると塗り直しの回数が増えるため費用対効果が低い |
塗膜がひび割れしにくい | 施工に専門知識が必要 |
モルタル外壁の劣化を防ぐ | 塗膜が厚いため膨らみやすい |
複層弾性塗料の特徴
複層弾性工法は、下塗り(シーラー)→高弾性中塗り2回→上塗り2回の5工程になります。
塗膜が厚くなることで、耐久性や防水性が向上し、モルタル外壁の保護に適しています。
複層弾性塗料の特徴とデメリットは下記のとおりです。
特徴 | デメリット |
塗膜が厚く、弾力性が高い | 工程が多く、工期が長くなる |
上塗りに自由なグレードの塗料を使用可能 | 手間がかかる分、費用が高くなる |
耐用年数が長い | 塗装の技術が必要で、施工が難しい |
微弾性塗材の特徴
微弾性工法は、微弾性フィラー→上塗り2回の2工程になります。
モルタル外壁の劣化を防ぐのに役立ち、施工が比較的簡単で上塗りに自由なグレードの塗料を使用できます。
微弾性塗料の特徴とデメリットは下記のとおりです。
特徴 | デメリット |
ゴムのように伸びる性質を持ち、細かいひび割れを埋める効果がある。 | 耐久性が他の塗料より劣るため、頻繁な塗り直しが必要になる場合がある。 |
モルタル外壁の仕上げ
モルタル外壁の仕上げには、リシン・スタッコ・吹き付けタイル・左官仕上げの4種類あり、それぞれの特徴について紹介します。
リシン仕上げ
砂のようなザラザラした表面を持つ外壁仕上げで、落ち着いた雰囲気に仕上がります。
リシン仕上げは汚れがつきやすく、塗膜が薄いため、防水性や耐久性がやや低く、ひび割れしやすいです。
比較的安価で、通気性が高いという特徴も持っています。
スタッコ仕上げ
リシン仕上げよりも厚みがあり、重厚感のある外壁仕上げ方法です。
表面に凹凸があるため、立体感があり、高級感がある仕上がりになります。しかし、この凹凸部分に汚れがたまりやすいです。
施工費用が高くなることもデメリットの一つです。
吹き付けタイル仕上げ
ボンタイル仕上げとも呼ばれ、合成樹脂を基材とした塗料を吹き付けて仕上げる方法です。
施工時間が短く、費用が抑えられることが特徴です。
つるつるとした光沢のある表面で、見た目に重厚感があります。
左官仕上げ
職人がコテを使って手作業でモルタルや漆喰などの材料を塗り、磨き上げる工程です。
デザイン性の高い模様塗りが特徴で、ハンドメイド感のある独特の仕上がりとなります。
モルタルを均等に塗り広げた後、表面を磨くことで美しい仕上がりになります。
モルタル外壁の塗装方法
モルタル外壁の塗装方法には3種類あります。
砂骨ローラーで塗装、意匠性の高い吹き付け塗装、左官仕上げについて紹介します。
砂骨ローラーを用いる塗装
スプレー塗装に比べて扱いやすいという特徴があります。
砂骨ローラーを使用することで、塗膜にしっかりと厚みを持たせることができ、耐久性の高い仕上がりになります。
しかし、スプレー塗装と比較すると作業時間が長くなり、使用する塗料の量も多くなります。そのため、コストが増えますが、塗装の精度や耐久性を重視した仕上がりになります。
意匠性の高い吹き付け塗装
スプレーガンを使用して塗料を吹き付ける方法なので、デザイン性の高い仕上がりにできます。
ローラーと比べて作業時間が短く済む一方で、薄く均一な塗膜を作りやすいのが特徴です。ただし、スプレーガンの扱いは難しく、動作音が大きいというデメリットもあります。
左官仕上げ
コテを使用して手作業で行われる塗装方法です。
デザイン性が高く、手作業によるハンドメイド感のある仕上がりが特徴です。
具体的には、コテやヘラなどの道具を使い、モルタルや漆喰などの材料を塗り広げて模様を作ります。表面は立体的なデザインとなり、独特の質感が魅力です。
一度に多くの面積を塗ることが難しいため、作業には時間がかかります。
モルタル外壁の塗装工程
モルタル外壁に塗装をする際の工程を以下のようにまとめました。
工程ごとに必要な作業を説明します。
工程 | 作業内容 |
足場設置 | 安全に作業を進めるため、足場を設置します。作業員の安全確保と効率的な作業のために必要です。 |
壁の高圧洗浄 | 外壁の汚れやホコリ、古い塗膜を高圧洗浄機で徹底的に洗い流します。これにより、塗装の密着性が向上します。 |
養生 | 塗装しない部分(窓やドアなど)をビニールシートやテープで覆い、塗料が付着しないように保護します。 |
下塗り | プライマーを塗布して下地を整えます。これにより、上塗りの塗料がしっかりと密着し、耐久性が向上します。 |
中塗り | 塗膜の厚みを増すために、中塗りを行います。中塗りは、仕上げ塗装の下地を整える役割もあります。 |
上塗り | 最終的な仕上げの塗装を行います。上塗りによって、美観を整え、防水性や耐久性をさらに高めます。 |
引き渡し | 塗装が完了したら、品質を確認し、お客様に引き渡します。施工後の点検と清掃も行います。 |
足場解体・完了 | 作業がすべて完了したら足場を解体し、現場を清掃します。これで全工程が終了します。 |
モルタル外壁を塗装する際のポイント
モルタル外壁を塗装するときのポイントとして、
- モルタルの仕上げには塗料は多めに準備
- 透湿性の高い塗料を使う
- 仕上げの風合いがなくなる場合があるので注意
について紹介します。
モルタルの仕上げには塗料は多めに準備
モルタル外壁の塗装は、他の材質と比べて塗料の吸い込みが非常に多いのが特徴です。このため、塗料の消費量が多くなりがちです。
塗装を行う際には、余裕をもって塗料を多めに準備します。
施工の計画段階で、予想される塗料の使用量をしっかりと見積もり、無駄のない施工を心掛けましょう。
透湿性の高い塗料を使う
モルタル外壁は湿気を吸収しやすく、塗膜の膨張や剥がれの原因となりやすいです。そのため、透湿性の高い塗料を選びます。
透湿性塗料は、湿気を外に逃がす一方で、外部からの雨水の侵入を防ぐため、外壁の長寿命化につながります。
仕上げの風合いがなくなる場合があるので注意
リシン仕上げなどの独特な風合いを持つ外壁に塗装を行う際は注意が必要です。
塗料の選び方や塗装方法によっては、元の凸凹や質感が失われてしまうことがあります。
風合いを維持するためには、微弾性フィラーを使わず、再度吹き付け塗装を行うなどの方法があります。
外壁の風合いを大切にしたい場合は、事前に塗装業者とよく相談しましょう。
モルタルの塗装費用相場
場所や広さ、使用する塗料によって価格が変動します。
外壁、ベランダ床、浴室壁のそれぞれの広さと料金相場を紹介しますので、参考にしてください。
モルタル外壁の塗装費用相場
一般的な30坪の住宅の場合、20万円から40万円が費用相場です。
ベランダのモルタル床の塗装費用相場
10㎡あたり5万円から10万円が費用相場です。
浴室のモルタル壁の塗装費用相場
10㎡あたり3万円から8万円が費用相場です。
環境や使用する塗料によって費用は変動するため、具体的な見積もりは専門業者に依頼することをおすすめします。
モルタルの塗装でDIYは可能?
モルタルの塗装はDIYでも可能ですが、色あせや軽度の劣化症状に限定したほうがいいです。
劣化が進んだ場合やひび割れなどがある場合は、DIYでは難しいため二度手間になることがあります。
モルタルのDIYに必要な道具と費用
自分でモルタルを作って、塗装するときに必要な道具と費用について紹介します。
道具 | 費用相場(円) | 用途 |
高圧洗浄機 | 約10,000~30,000円 | 壁面の汚れや古い塗膜を取り除く |
ローラーとブラシ | 約1,000~3,000円 | 塗料を均一に塗布するための基本的な道具 |
マスキングテープとシート | 約1,000~2,000円 | 塗料が不要な部分を保護するための養生材 |
下地調整材(パテやフィラー) | 約1,000~3,000円 | ひび割れや凹凸を修正するため |
塗料 | 約5,000~20,000円 | 塗装面を保護し、美観を保つ |
塗料バケットやトレイ | 約500~1,500円 | 塗料を一時的に保持するため |
梯子または足場 | 約5,000~50,000円 | 高所作業を安全に行うため |